パラ・パワーリフティングの「第5回チャレンジカップ京都」が17日、城陽市のサン・アビリティーズ城陽で開催された。
東京パラリンピック男子59㎏級日本代表の光瀬智洋(エグゼクティブプロテクション)は、美しいパフォーマンスを披露。第2試技で147キロ、第3試技でも150キロに成功し、自身が持つ日本記録を一気に4キロ更新した。特別試技で挑戦した152キロは失敗したものの、「楽しかった」と笑顔で振り返った。
男子88㎏級の日本記録保持者である大堂秀樹(SMBC日興証券)は、80㎏級に階級変更して出場。完璧な試技で166キロをマークし、優勝した。「もともと体重はマックスでも83㎏ほどで、88㎏級に出場するための増量が大変だった。これ以上増えないと考えて、階級を変更した」と大堂。今後は80㎏級で戦っていくとし、まずは世界上位ランクの目安となる200キロを目標に掲げる。過去には非公認ながら80㎏級で198キロに成功しており、今後のパフォーマンスに注目が集まる。
同88㎏級は、1月の全日本から好調を維持する田中翔悟(三菱重工高砂製作所)が自己ベストの171キロを挙げて制した。田中はかつてアームレスラーとして活躍。右足義足ながら2度、関西チャンピオンになった経験があるという。その後、リオパラリンピックでの大堂の勇姿を観て興味を持ち、パラ・パワーリフティングに転向した。競技歴とともに身体も大きくなり、階級を変えながら技術の精度を磨いてきた。現在は所属する会社と相談し、フィットネスルームにベンチプレス台を設置してトレーニングに励む。6月のアジア・オセアニア地域選手権でどこまで上位に食い込むことができるか、田中らしい美しく力強いパフォーマンスに注目したい。
3選手がエントリーした女子67㎏級でも日本新記録が誕生した。日本記録保持者の森﨑可林が第2試技で記録を1キロ更新する69キロを挙上。すると、直後に龍川崇子(EY Japan)がさらに1キロ上回る70キロを挙げ、第3試技でも72キロに成功し、記録を塗り替えた。龍川は本来は61㎏級の選手だが、「今回は減量に失敗してしまった」ために階級を上げて出場した。今後は61㎏級に戻す予定で、「世界との差は大きい。はやく100キロを持ち上げられるようにしたい」と笑顔を見せた。
競技者数は増加傾向にあるとはいえ、とくに女子はまだ少ない。これまで国内の67㎏級をひとりで盛り上げてきた森﨑は、「国内でこの階級を3人で戦うのは初めて。そのなかで2位は本当に悔しい」とコメント。ただ、肩の使い方などフォームを改良して挑んだ内容で自己ベストは更新しており、「反省をしつつ、巻き返していきたい」と力強く話した。
同55㎏級の山本恵理(日本財団パラスポーツサポートセンター)は62キロを挙げて優勝。2020年8月に発症した亜急性甲状腺炎から復帰途中にあり、「もう少しのところまで来ている」と、前を向く。この半年は身体の使い方に向き合ったといい、肉体の変化とともに試技前のルーティンの一部も変更。歩みを止めずに模索を続け、完全復活を目指していく。
同41㎏級の中村嘉代は、公式戦は初出場ながらすべての試技をパーフェクトに決め、58キロの日本タイ記録をマーク。中村は陸上競技の選手(T54)として活躍中で、トレーニングの一環でベンチプレスを取り入れているという。筋力が増し、レース後半の伸びに活かされているといい、「パワーリフティングも並行してがんばっていきたい」と語った。
(取材・文・撮影/荒木美晴)