パラトライアスロン — 2023/5/13 土曜日 at 23:04:26

【横浜大会】木村潤平が世界シリーズ初優勝!

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男子PTWCクラスで頂点に立った木村(中央)=山下公園周辺特設会場(撮影/植原義晴)

2023ワールドパラトライアスロンシリーズ横浜大会のエリートの部が13日、横浜市の山下公園をスタート・フィニッシュとする特設会場で行われた。各国のトップ選手が集結する世界最高峰の大会シリーズのひとつで、日本からは男子9人、女子1人が参加。男子PTWC(車いす)は、木村潤平(Challenge Active Foundation・サンフラワー・A)が初優勝を果たした。

木村は「めちゃくちゃ嬉しい」、米岡も表彰台

最初のスイムを2番手で上がってトランジションでタイムをつめると、続くバイクでは自分のペースを乱すことなく駆け引きを制し、最後のランはトップで走り抜けた。男子PTWCの木村は初優勝。「これまで何度もチャンスがあったのになかなか優勝できなかった。今日はプランがはまり、思い通りのレースができた」と振り返り、自国開催の大会で掴んだ頂点に「めちゃくちゃ嬉しい」と頬を緩めた。

男子PTVI(視覚障がい)は、日本人選手が4人エントリー。東京2020パラリンピック(以下、東京2020大会)銅メダリストの米岡聡(三井住友海上/花岡秀吾ガイド)が3位に入った。神奈川県出身で地元の友人らが応援に駆けつけてくれていたといい、米岡は「走りながら泣きそうになるくらい、(声援を)全身で感じながらレースを進めることができた」と、笑顔を見せた。

次世代の奮起うながす佐藤「はやく俺を抜いていけ」

雨が降る中、バイクで力強い走りを見せる佐藤

夏冬・二刀流のパラリンピアン、佐藤圭一(セールスフォース・ジャパン)は男子PTS5に出場し、11人中9位でゴールした。ノルディックスキー距離とバイアスロンの選手で昨年の北京大会を含めて4度、冬季のパラリンピックに出場。スキーのトレーニングの一環で自転車に乗っていた延長で本格的に始めたトライアスロンでも日本代表に選ばれ、リオ大会に出場した。

今季は3月に北海道で開催されたノルディックスキーの国際大会後からトライアスロンに切り替えトレーニングに取り組んできたが、「今回は余計な筋肉がついたままで、思うようにウエイトを落とせなかった」と、競技移行の壁に苦しんだことを明かす。それでも「機材を使って技術でタイムを縮めることはできる余地がある」と言い切り、「もうちょっとパフォーマンスを上げて、次世代の育成、日本チーム全体のレベルアップにつなげられれば」と話し、前を向いた。

また、同クラスの梶鉄輝(JPF)は自身過去最高の7位に入った。この日は早朝から雨が振り滑りやすい路面状況だったが、マウンテンバイクの経験を活かして乗り切った。「普段は土の上でも走っているし、オフロード系をやっているので、今日のような雨天でスリッピーな路面でも攻めていける。スイムは抑え気味にいき、得意のバイクでは100%の力を出せた」と梶。このクラスをけん引している佐藤からは「はやく俺を抜いていけ」と言われているといい、「自分もちょっとずつ強くなっていることを結果で表すことができたかなと思う」と話した。

東京2020大会銀メダリストで、昨年3位の男子PTS4の宇田秀生(NTT東日本・NTT西日本)は4位でフィニッシュ。東京2020大会金メダリストのアレクシ・アンカンカン(フランス)は唯一、57秒台をマークし、圧巻の勝利を果たした。宇田は「彼の背中は見えなかったけれど、課題にしているスイムは海でのトレーニングの成果が出ていい泳ぎができた」と手ごたえを語った。

手術から復帰の秦は「すごく楽しかった」と涙

苦しい時期を乗り越え、競技に復帰した秦。レース後は「楽しかった」と語った

女子日本勢で唯一出場となったPTS2の秦由加子(キヤノンマーケティングジャパン・マーズフラッグ・ブリヂストン)は5位だった。大腿切断の右脚に義足を着けて競技をする秦は、ランの時の断端部の痛みを軽減するため、東京2020大会出場後の11月に大腿骨を短くし、筋肉で先端を覆う手術を決断。回復までに1年半かかったといい、「昨年はずっとひとりで練習していて、自分がどれくらい強くなっているのか、手術の成果がどれくらい出ているのかなかなか分からなかった」と苦しんだ。

それでも、「手術してよかったかどうかは自分次第。このまま痛みが取れなくて、走れなくなっても悔いはなし」と割り切って前を向き、再びレースへと戻った。今大会が復帰2大会目となり、トップの選手には水をあけられたものの、「レース感がよみがえってきた気がする。久々に、レース中はすごく楽しかった」と話し、目を潤ませた。

手術に伴い、関節の代わりになる膝継手を備えた競技用義足に刷新したが、義足自体の重量が重くなる側面もあり、「それをどうやってカバーしていくか。試行錯誤していきたい」と話した。

(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)