「ワールドパラ水泳公認2017ジャパンパラ水泳競技大会」が9月1日から2日間にわたって、東京辰巳国際水泳場で開催された。リオパラリンピックのメダリストや次世代を担う若手選手たちに加え、今年は大会として初めてスペインの2選手、ニュージーランドの2選手を招聘した。国内ではクラスによっては競う相手が少ない、あるいはいない場合もあり、選手たちにとっては強豪国のスイマーと直接対決を経験する貴重な場になった。
国内では敵なしのS10クラスの池愛里は今春、日体大に進学。オリンピアンも多数在籍する強豪水泳部を選んだ理由を、「リオで世界でまったく戦えないことがわかり、あえて苦しい環境を選びました」と語る。そんな池は今回、女子100mバタフライで世界記録保持者のソフィー・パスコー(ニュージーランド)と対戦。決勝は隣のレーンで泳ぎ、2秒以上の差をつけられてのフィニッシュとなったが最後まで食らいつき、1分8秒99をマーク。予選で自ら出した日本記録を更新した。「大きな刺激を受けた」とレースを振り返った池。「世界選手権(9月30日開幕/メキシコ)でも決勝に残れるよう頑張りたい」と飛躍を誓った。
2000年シドニーパラリンピックから昨年のリオまで5大会連続で出場し、そのすべてでメダルを獲得している40歳のミゲル・ルケ(スペイン)、そして4回のパラリンピックで金メダル1つを含む5つのメダルを手にしている鈴木孝幸(GOLDWIN)の「宿命のライバル対決」には、大会前から注目が集まった。
男子150m個人メドレー(SM4)決勝では、予選タイムを14秒上回る記録で泳いだ鈴木に軍配が上がったに見えたが、ルケが失格に。次に、ともに得意とする50m平泳ぎ(SB3)は、スタートからリードする鈴木を猛追したルケが制した。鈴木に対し、「彼は高いレベルを維持していて素晴らしい選手。競いがいがある」と話したルケ。また鈴木は、「ルケがいたので、世界大会に近い緊張感で試合に臨めた」と振り返った。
昨年のリオ出場を逃した悔しさをバネに急成長を遂げる16歳の小池さくら(日体桜華)は、専門の女子400m自由形(S7)予選で自身が出した日本記録を決勝でさらに更新。「過呼吸になりがちだけど、このレースはそんなに苦しくなかった」と手ごたえを口にする。「最後までペースを落とさない力強い泳ぎが強み」とも語り、世界選手権では自己ベスト更新を狙う。
リオのメダリスト・木村敬一(東京ガス)は、男子100m(S11)決勝で富田宇宙(日体大大学院)を振り切り優勝した。1分2秒69と、大会記録を更新するタイムだったが、「すべての要素が良くなかった。全部ずれていた感じ」と反省を口にした。その富田は、400m自由形決勝で4分39秒71をマーク。「目標だった」というアジア新記録を樹立して優勝した。
また、リオでは200m個人メドレーで銅メダルを獲得した、知的障がいの中島啓智(あいおいニッセイ)は男子100m(S14)バタフライ予選で59秒06のアジア新記録をマーク。決勝はその記録には及ばなかったものの、59秒23の好タイムで優勝した。中島はレース後、「59秒台前半が出せることがわかり、自信につながった。世界選手権では金メダルを獲りたい」と意気込みを語った。
なお、初日は会場内にて「女性アスリート相談窓口」が開設された。日本パラリンピック委員会(JPC)に今年4月の「JPC女性スポーツ委員会」が発足したことから実現したもので、トレーニング上の悩みや食事の相談、体調管理や指導法など、さまざまな相談を受け付けた。またこの女性アスリート相談窓口は、9月23日開幕のジャパンパラ陸上競技大会でも設置される予定。
(取材・文/荒木美晴、撮影/佐山篤)