9月30日〜10月6日まで、メキシコシティで「2017世界パラ水泳選手権大会」が開かれる。2年に一度開催される世界選手権は、パラリンピックに次ぐ世界規模の大会。日本からは24名の選手が、世界の頂点に挑む。
その日本代表メンバーのなかでも、勝利に強い意欲を見せたのが、視覚障がいの富田宇宙(うちゅう・日体大大学院)だ。2、3日に行われたジャパンパラ水泳競技大会では、男子400m自由形(S11)決勝で4分39秒71のアジア新記録を樹立し、好調な仕上がりを見せた。
普段は日体大水泳部でオリンピック選手らとともに練習に励む。日体大の水泳部は「日本一厳しい」と言われるが、信念を持って1日16キロを泳ぎ込んできた。「周りのアスリートに刺激を受けたことが記録につながっている」と富田。
実は富田はこの夏、大きな転換期の中にいた。7 月にベルリンで開催された「IDM ベルリン2017」で国際クラス分けが行われた結果、S13(視覚障がいの軽度)から S11(視覚障がいの全盲)に変更となり、世界選手権に追加派遣されることになったのだ。富田は進行性の病気「網膜色素変性症」を患っており、「生活面では見えなくなることがよいとは言えないけれど、(クラス変更は)いつかは、と思っていたし、競技面ではプラスに働く」と前を向く。
S11にはリオの銀メダリストで不動のエース・木村敬一(東京ガス)がいる。ジャパンパラ2日目には、男子100mバタフライで直接対決が実現。予選は木村を振り切りベストを更新して1位で通過。決勝では、0.79秒差で折り返すも最後に引き離され2位に終わったが、絶対王者を堂々、追い詰めた。
ライバルとなる木村とは普段から仲が良く、一緒に練習する間柄。木村は国内でようやくライバルが誕生したことに「やりにくいこともあるけれど、緊張感ある中でしのぎを削ることが大切。ふたりで引っ張っていきたい」と力強く話す。富田もまた、「しっかり意見交換して、切磋琢磨していきたい」と語る。
仲間として、ライバルとして。飽くなき向上心と弛まぬ努力で、富田はさらなる上を目指していく。
(取材・文/荒木美晴、撮影/佐山篤)