
9月2日に開幕するテニスの全米オープンに出場する世界ランキング1位の19歳・小田凱人(東海理化)が20日、名古屋市内で練習を行い、そのようすを報道陣に公開した。アップからミニゲーム、サーブとレシーブ練習など、約1時間にわたってじっくりと取り組んだ小田。練習後は報道陣の取材に応じ、「調子が良く、すごく順調に進んでいる」と力強く語った。
パリ2024パラリンピックで金メダルを獲得した小田。昨年はそのパラリンピックの日程被りにより全米オープンの車いすの部は実施されなかったため、2年ぶりの出場となる。全豪、全仏、ウィンブルドンはすでに優勝を経験しており、今年全米のタイトルを獲れば、パラリンピックと四大大会を制する『生涯ゴールデンスラム』達成となる。車いすテニス界では、23年に引退した国枝慎吾氏らがすでに記録しているが、19歳での達成となれば、健常を含めて男子では史上最年少かつ初の10代での偉業となる。小田は、「10代最後の今年、タイトルを獲ることに意味があると思っている。自分の名をテニス界の歴史の1ページに載せたいし、優勝した時に自分がどんな感情になるのか楽しみ」と笑顔を見せた。

小田は23年の全仏オープンを史上最年少の17歳で制して以降、グランドスラム6勝をマークする。今大会は、2連覇中で世界ランキング2位のアルフィー・ヒューエット(イギリス)が最大のライバルとなりそうだ。また、同3位のマーティン・デ ラ プエンテ(スペイン)、同4位のグスタボ・フェルナンデス(アルゼンチン)らクレーコートで高い勝率を誇るプレーヤーも、近年はハードコートで存在感を示している。
そのなかで、小田は「自分から試合を展開して主導権を握る、それを色濃く出していきたい」と語る。積極的な姿勢はもともと小田の持ち味でもあるが、「どの選手もプレースタイルを変えてきているから」と、世界のプレーヤーの変化に注視する。
今年のウィンブルドン後以降、テニス車と右脚を固定するバンドを取り払い、テニス車の中央部から伸びるプレートで横から支えるスタイルで挑んでいる。「バンドをなくしちゃって、試合前に大慌てしたことがあって」と変化の理由に苦笑いを浮かべつつも、新たなチャレンジによってテニス車との一体感がより出たという。小田は「バンドの時よりも車いすに自分の脚がくっついていて良い感じ。もう少し手を加えて全米もこれで行く予定」と話し、前を向いていた。
全米オープンの車いすの部は、9月2日~6日まで。小田は22年に16歳で初出場し、1回戦でステファン・ウデ(フランス)にストレート負けを喫した。23年は準々決勝でニコラ・パイファー(フランス)にフルセットで敗れている。今年は1月の全豪オープン決勝でヒューエットに敗れて以降、4月のジャパンオープン、5月のワールドチームカップ、6月の全仏オープン、7月のウィンブルドンにエントリーし、すべての試合で勝利している。
(取材・文・写真/荒木美晴)