
日本で唯一のATP(男子プロテニス協会)ツアー公式戦である「木下グループジャパンオープン2025」が有明コロシアムおよび有明テニスの森公園コートで開かれている。27日からは「木下グループ車いすテニスチャンピオンシップス2025」がスタート。8人が出場し、シングルス1回戦が行われた。
髙野頌吾(かんぽ生命)と川合雄大(エヌエヌ生命保険)の試合は、6(6)-7、6-3、6-4のフルセットの末に髙野が逆転勝ちをおさめた。第1セットはタイブレークに持ち込むなど序盤から大接戦に。セットカウント1-1で迎えた第3セットも終盤でブレークし合うなど互いに譲らない展開が続いたが、最後は高野が強打を決め、3時間3分の熱戦に終止符を打った。
「最後まで戦況を把握しながらプレーできていた」と高野。終盤には川合がアンダーサーブで流れを変えてきたり、機械の誤作動で試合が中断する時間もあったが、髙野は「集中力を切らさずできた」と、胸を張った。28日の準決勝は同じく1回戦を勝ち上がった小田凱人(東海理化)と対戦する。「昨日は一緒に練習をして、サーブも受けた。あまり硬くなりすぎず、ただやるべきことをやりたい」と言葉に力を込めた。

今年の全米オープンを制して生涯グランドスラムを達成し、大会3連覇を目指す第1シードの小田は、城智哉(森六)に6-0、6-0で勝利した。ジュニア時代をともに戦ったふたりの対戦は2023年のジャパンオープン以来で、小田の4連勝中。小田は安定したサーブとストロークで試合の主導権を握り、城にリズムを渡さなかった。
その城は2回目のジャパンオープン。前回は国枝慎吾(ユニクロ)と対戦して敗れている。「前回も今回も、世界ランキング1位の選手と対戦した。前回は雨の影響でインドアコートに変更になり、お客さんがいない中での試合だったが、今回はショーコートという大きな舞台で試合ができて光栄だった」と城。今春、大学を卒業し、4月から企業に所属しながら車いすテニスプレーヤーとして活動する。今年は今大会が13大会目と、国内外問わず積極的に大会にエントリーし、腕を磨いている。「自信がついてきた時期に今大会を迎えたけれど、小田選手は僕の想像をはるか先を行っていた」と振り返った城。それでも、サーブではさまざまな球種を使い分けて小田のリターンエースを防ぐなど、手ごたえを感じるシーンもあった。一時期はケガの影響で世界ランキングを落としたが、昨年はキャリアハイの48位まで上げ、今大会は50位で臨んでいる。「今年はランキングを徐々に上げて、20位以内までいくのが目標。もっと実力をつけて、いずれ小田選手と互角に戦えるプレーヤーになって、また戻ってきたい」と力強く語った。

第2シードの荒井大輔(BNPパリバ)は河野直史(ロイヤリティマーケティング)を6-4、6-2で下して準決勝に駒を進めた。両者の対戦は3年ぶりで、荒井が3連勝中。第1セットは河野のチェアワークやショットのコースの読みが冴え、互角の戦いに。だが、ここぞという場面でギアを上げた荒井が第1セットを奪うと、第2セットは連続リターンエースを決める集中力を見せ、荒井が勝ち切った。実はシングルスでの1回戦勝利は4回目の出場にして初だった荒井。「出だしは丁寧にいき過ぎて動きが硬かったけれど、第2セットのファーストサーブとリターンのリズムが良くなったのが大きかった」と振り返った。
また、ATPの大会でプレーすることについて、荒井は「先輩方がこれまで素晴らしいパフォーマンスを見せてきたから、そしてアスリートとしての社会的貢献度が高いからこそ実現したこと。実際に車いすテニスは“パラスポーツ”という枠を超えてきていると思うし、こうして健常の大会のなかで一緒にプレーする大会や機会がさらに増えることを願っている」と話した。
今大会は、海外勢ではモハマド・ユソフ(マレーシア)が唯一エントリー。1回戦では、藤本佳伸(GA technologies)に6-1、6-2で勝利した。
(取材・文/荒木美晴、写真/植原義晴)