「2023ジャパンパラ車いすラグビー競技大会」は4日、千葉ポートアリーナで1次リーグが行われ、日本はアメリカに57-46、またオーストラリアに58-48で勝利。最終日の5日に、決勝戦でフランスと対戦する。
<日本 57-46 アメリカ>
今大会は、「乗松兄弟」が活躍している。兄・隆由と弟・聖矢で、2人はともに神経の異常により筋力が徐々に低下する難病のシャルコー・マリー・トゥース病で、先に車いすラグビーを始めた弟に、兄が続いた。この日のアメリカ戦では、別々のラインで起用されていたが、第4ピリオドの終盤には同じラインでコートに立ち、呼吸を合わせて強力なディフェンスで強豪の動きを封じる活躍を見せた。
弟の聖矢(1.5)はパラリンピックと世界選手権にも出場し、兄の隆由(1.5)は今大会が2019年の「車いすラグビーワールドチャレンジ」(WWRC)以来、3年ぶりの代表召集だ。隆由は久しぶりに代表チームに合流し、「ケビンHCが考える攻守の考えが、チーム全員の共通認識として浸透していると感じる。3年ぶりに海外のチームと対戦したけれど、いつも合宿で対峙している池崎(大輔)さんや池(透暢)さんといった日本のハイポインターってすごいんだと、コートに出て改めて感じた」と、チームを離れていたからこそ感じた日本チームの成長について語る。
代表定着を目指す隆由にとって、今大会は自身の実力をアピールする場でもある。アメリカ戦では、3-3-1.5-0.5(池崎-池-隆由-長谷川)と、3-2-1.5-1.5(池-中町-隆由-聖矢)のふたつのラインで出場し、どちらも好パフォーマンスを発揮した。「世界で通用するんだ、代表の力になるんだというところを見せつけなければいけない大会だと思っている。短いプレータイムのなかでどうやって自分の特徴を出すか、攻撃も守備もミスなくやることを意識している」と隆由は話しており、最終日のプレーにも注目が集まる。
<日本 58-48 オーストラリア>
オーストラリア戦は試合開始のティップオフでボールの所有権を失い、相手にトライされるシーンからスタート。その後もインバウンドのパスがつながらずにターンオーバーを許し、第1ピリオドを14-15と、今大会で初めて追いかける展開となった。しかし、ここから日本は底力を発揮。第2ピリオド早々に同点に追いつくと、第3ピリオドは日本の強力なタックルと堅い守備で相手の攻撃の芽を摘んで逆転。最終ピリオドも4連続トライを決めるなどして10点差をつけて勝利した。
キャプテンの池によれば、前日の試合ではチームに少しゆるみがあり、そこをケビン・オアーHCに叱られてこの日の試合を迎えたといい、「今日は全員の精度が一番いい状態に持って行けた」と振り返る。また、6試合目にして初めて日本が追いかける展開を経験したが、「(リードされた第1ピリオドは)学びのピリオドだった。負けているメンタルで、ここからどう戦うか、非常に勉強になった」と話し、前を向いた。
(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)