車いすラグビー — 2019/10/21 月曜日 at 2:55:03

【WWRC2019】日本銅メダルで見えた、東京パラでの金メダルにつながる“チームの力”

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3位決定戦でもスピードを生かしたアグレッシブなプレーを見せた池崎大輔(左)=東京体育館(撮影/植原義晴)

「車いすラグビーワールドチャレンジ2019」は20日、大会最終日を迎え、3位決定戦で日本がイギリスを54-49で破り、銅メダルを獲得した。

前日のオーストラリアとの死闘を落とした悔しさを、胸に刻んで挑んだ最終戦。日本は鉄壁の守備を軸に試合を有利に展開した。スピードを生かしたタックルやパスカットからターンオーバーにつなげ、欧州覇者のイギリスにプレッシャーを与え続けた。日本のファールで連続失点する場面もあったが、すぐに切り替えて攻撃に転じると、最後まで高いパフォーマンスを発揮した。

大会を終え、攻守で活躍した池崎大輔(3.0)は「(準決勝でオーストラリアに敗れて)悔しさしか残っていない。でも、今日は今の自分たちができる最高の順位で終われた。来年の東京パラで悔し涙を流さないように、これをバネにこれからの時間を過ごしていきたい」と語り、3位という結果をかみしめた。

「ハードワーク!」「プレッシャー!」

日本の池は、「ベンチメンバーの、自分の声をコートまで届けようという気持ちが、全員をひとつにさせた」と話した

会場に詰めかけた観客の声援をバックに、仲間からも大きな声が飛ぶ。

「自分たちの手が止まりそうな時に、ベンチから声が聞こえて、もう一度全力で走ることができた。チーム全員で戦っていた」と池透暢(3.0)は振り返る。

日本の得点源のひとりであり、キャプテンとして精神的支柱でもある池は、出場時間も長く、常に相手に厳しくマークされる立場だ。とくにイギリスや世界1位のオーストラリアといった強豪国が相手となれば、ミスをした方が負け、というギリギリの展開が続く。それでも池は、最後まで自分の集中力が切れることはなかった、と明かす。

「ベンチの選手だけでなくスタッフも、その時に必要な言葉を、ベストなタイミングでかけてメンタルを上げてくれた。僕自身が厳しい状況の時は、察したスタッフが『池さん、いまは緩んでいいんです』って言って、僕の代わりをしてくれたり。それで僕は安心して自分のパフォーマンスができた。これが日本の“チーム力”だなと感じました」

地元開催の”パラ前哨戦”で勝利も敗戦も経験し、“ONE TEAM”の精神がより強固になった日本。10か月後に迫った東京パラリンピックに向け、ここから再びギアを上げていく。

アメリカがオーストラリアを下し優勝!

アメリカのチャック・アオキ(左)とオーストラリアのライリー・バット。そのハイレベルな攻防に、会場は幾度とどよめいた

決勝戦はオーストラリアとアメリカが対戦。27-27と同点で前半を折り返した両チーム。第3ピリオドに入ってまずリズムを掴んだのはアメリカだった。パスカットからのターンオーバーで得点してリードを広げると、守備をかためてオーストラリアのミスを誘い、主導権を握った。

一方のオーストラリアは、ライリー・バット(3.5)が試合時間残り3分まで連続出場してチームを鼓舞したが、挽回できず。51-59でアメリカに敗れた。

バットは前日の準決勝の日本戦にフル出場し、勝利に貢献したが、「今日は昨日のタフな試合でエネルギーが残っていなかった。悔しい」と話した。

大会5日間を通して、約3万5000人が会場に訪れた。最終日も日本が出場した3位決定戦後も多くの観客が会場に残り、決勝戦に声援を送った。予選リーグを含め、全試合で存在感を発揮したアメリカのエース、チャック・アオキ(3.0)は試合後、「たくさん応援をしてもらって本当に嬉しかった。車いすラグビー界には素晴らしい選手がたくさんいるので、ぜひ来年の東京パラリンピックも観に来てほしい。どうもありがとう」と感謝の言葉を述べていた。

<最終結果>
優勝 アメリカ
2位 オーストラリア
3位 日本
4位 イギリス
5位 カナダ
6位 フランス
7位 ニュージーランド
8位 ブラジル

(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)