群馬県前橋市の正田醤油スタジアム群馬で行われているWorld Para Athletics公認「2018ジャパンパラ陸上競技大会」が8日、競技2日目を迎え、男子走幅跳(T64)で右脚義足のマルクス・レーム(ドイツ)が8m47の世界新記録を樹立した。
まさに、王者の王者たる、圧巻の跳躍だった。
1本目に8m18を跳び、順調なスタートを切ったレームは、2本目から4本目までは記録を伸ばせなかったが、5本目でリオパラリンピックの金メダルジャンプ(8m21)を上回る8m27を跳んだ。そして、会場中の観客の視線を一身に集め、集中力を高めて臨んだ最後の跳躍。力強い助走で踏切ると、その身体は空を切り裂くかのように鋭く舞い上がり、自身が持つ世界記録を7㎝上回る大ジャンプとなった。
電光掲示板に記された「8m47」に何度もガッツポーズを作って見せたレーム。ともに戦った日本人選手や、固唾をのんで見守った観客から大きな拍手で称えられ、満面の笑顔を見せた。
もとの世界記録である8m40は2015年にマークした。ロンドン五輪の優勝記録(8m31)をも上回っており、当時は世界を驚かせたとともに、カーボン繊維製の義足の優位性についての議論が立ち上がった。今回の新記録も、リオ五輪金メダルの記録(8m38)を超え、また健常の今季走幅跳の世界3位タイに相当する大記録で、報道陣から五輪出場の可能性などついて問われると、「大きなモチベーションになるね。僕は自分がパラリピアンであることを誇りに思っている。オリンピアンにより一層近づきたいというのが僕の願いだし、実際に近づいていると実感している」と、コメントした。
2年後に迫った2020年東京パラリンピックでも、間違いなく注目のアスリートとなるだろう。レームはその東京に向けてさらなる記録に挑戦することを公言しており、今後がますます楽しみになった。会場での声援に「どうもありがとう」と日本語で感謝の気持ちを述べ、さわやかな笑顔とともに去っていったレームの名は、歴史の1ページと、日本人の心に深く刻まれた。
ポポフ・山本・ヨルゲンセンの三強が競演
大腿切断などのT63クラスの男子走幅跳は、リオパラリンピック金メダルのハインリッヒ・ポポフ(ドイツ)、銀メダルの山本篤(新日本住設)、銅メダルのダニエル・ワグナー・ヨルゲンセン(デンマーク)がそろってエントリー。山本が今季ベストの6m41で2位に入った。ヨルゲンセンが同記録をマークし、2番目の記録の差で優勝した。
山本は左肩脱臼の影響で初日の100mは欠場したが、今大会が、8月のヨーロッパ選手権を最後に現役を引退するポポフと対戦する最後の機会となることから、出場を決めたという。「最後にダニエルに逆転されちゃったけど、それも幅跳びの楽しいところ。みんなで盛り上げたいと思っていたし、最後にポポフと一緒に戦えてよかった」と笑顔を見せた。
(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)