柔道 — 2022/9/12 月曜日 at 23:17:35

メダリスト瀬戸も階級変更、ルール改正で転換期迎えた柔道

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階級を変更し、男子73㎏級に出場した瀬戸勇次郎(右)=講道館(撮影/植原義晴)

第37回全日本視覚障害者柔道大会が11日、講道館で開催された。新型コロナの影響で、一昨年は中止、昨年は無観客試合となったが、今年は3年ぶりに有観客で行われた。

視覚障害者柔道は、大きな転換期を迎えようとしている。今年1月から新たなレギュレーションが適用され、体重階級別(男子7階級、女子6階級)から、全盲と弱視の2つのクラスに分けたうえ、それぞれ男女別の4つの体重階級(男子は60㎏級、73㎏級、90㎏級、90㎏超級/女子は48㎏級、57㎏級、70㎏級、70㎏超級)での実施に変更されている。

これによって、階級変更を迫られる選手が少なくない。昨年の東京2020パラリンピックの男子66㎏級で銅メダルを獲得した瀬戸勇次郎(福岡教育大)は、今大会は階級を上げて73㎏級に出場。リーグ戦の3試合すべてで一本勝ちして優勝したが、昨年の大会で81㎏級を制した加藤裕司(伊藤忠丸紅鉄鋼)との対戦では、体格差に苦しんだ。瀬戸は体重こそマックス75キロ台に増量したものの、この階級で戦うための筋肉はまだ足りないといい、「パリまでにはやく身体を作らなければ」と課題を口にする。

女子57㎏級の廣瀬対工藤の一戦は、ゴールデンスコアの末に廣瀬が横四方固めで勝利した

また、同じく東京パラリンピック女子63㎏級7位の工藤博子(シミックウエル)は57㎏級で出場。国内のこの階級は廣瀬順子(SMBC日興証券)の独壇場だったが、今大会は5人がエントリーする混戦模様となった。工藤は3位に入り、「もともと痩せやすいタイプなので、57㎏級は自分に合っていると思う」と分析し、「廣瀬選手は強い選手。切磋琢磨し、本気で戦っていきたい」と話した。

また、組んだ状態で至近距離から始まる視覚障害者柔道だが、以前は組み方の引き手で持つ位置が相手の上腕のみだったものが、ルール変更で前腕も掴んで良いことになった。髙垣治監督によれば、組み方のルール変更によって最初の間合いがわずかに広がることで戦略も変わってくるという。瀬戸と初戦で対戦した藤本聰(徳島視覚支援学校教員)は、「いつも首を入れ直して体勢を立て直して戦っていたので、私にとってはすごくいいルール」と歓迎する一方で、瀬戸は「もともと上腕を持って戦う自分にとっては、あまりいい方向に向かない。袖口を掴んでくる相手に対しては研究をしなければ」と話し、気を引き締めていた。

(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)