柔道 — 2023/12/5 火曜日 at 1:13:45

【柔道GP】瀬戸勇次郎が金メダル獲得!

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初戦から豪快な柔道で頂点に立った瀬戸(右、写真は準決勝)=東京体育館(撮影/植原義晴)

視覚障害者柔道の国際大会「IBSA Judo Grand Prix Tokyo 2023」が4日、東京体育館で開幕した。東アジアで開催される初のグランプリ大会で、パリ2024パラリンピックのランキングポイント付与対象大会のひとつ。パラリンピック出場を目指す世界トップクラスの選手が世界中から集結した。また、この大会はIJF(国際柔道連盟)主催の柔道グランドスラム大会(12月2-3日)とのジョイント開催なっている。

視覚障害者柔道は昨年1月にクラス分けルールが変更され、これまでの体重別の男子7階級、女子6階級から、全盲(J1)と弱視(J2)の2クラスに分かれ、それぞれ男女別の4階級で実施されている。

東京2020パラリンピック(以下、東京2020大会)では男子66㎏級で銅メダルを獲得した瀬戸勇次郎(九星飲料工業)は階級を変更して、現在は同73㎏級(J2)が主戦場。今大会は2回戦から登場し、東京2020大会男子73㎏級金メダリストでパリパラ世界ランキングでも2位につけるフェルズ・サイドフ(ウズベキスタン)に先に巴投げで技ありを許すが、得意の背負投げを2度決め、合わせ技で一本勝ちした。勢いに乗る瀬戸は、準々決勝と準決勝もそれぞれ背負投げで一本勝ちして決勝に駒を進めると、その決勝ではカザフスタン人選手を相手に豪快な大内刈りを決めるが、その前に相手がダイビング(頭から突っ込む技)の反則をしていたとジャッジされ、瀬戸の反則勝ちとなった。

階級変更という「逆風」に立ち向かい、フィジカル強化を重ねてきた瀬戸。パリを目指すうえで序盤の山場となる昨年11月の世界選手権、今年8月のIBSAワールドゲームズでは初戦敗退と結果を残せなかったが、地元開催の今大会でようやく頂点に立つことができた。「背負投げは警戒されていたが、強みを出せた。この勝利でポイントの上積みができ、残りの大会も成績を残して、パリでも金メダルを獲りたい」と、笑顔を見せた。

キルギスの選手にアジアパラのリベンジは果たせなかったが、果敢に攻めた半谷(右)

女子48㎏級(J1)の半谷静香(トヨタループス)は、初戦でゴールデンスコアに突入するも相手が指導を3回受け、半谷が反則勝ち。準決勝はドイツ人選手に上四方固と縦四方固の合わせ技で1本勝ち。決勝では10月の杭州2022アジアパラの決勝でも対戦したハイートホン・フサンキジ(キルギス)を相手に粘りを見せたが、ゴールデンスコアの14秒に背負投げを返されて一本負けを喫した。アジアパラに続いて銀メダルとなった半谷は、「優勝が目標だった。アジアパラの負けを取り返すつもりで臨んだので、ひたすら悔しい」と振り返った。昨年5月に右脚の前十字靭帯を痛め、手術を経験。10月に畳に戻り、少しずつ稽古を増やした。今年5月の全日本で復帰して以降、国際大会は今回で3大会目だが、パリパラ世界ランキングでは上位につけており、本大会に向けてさらなる強化を誓っていた。

同48㎏級(J2)は、藤原由衣(モルガン・スタンレー・グループ)が初戦となる準々決勝で東京2020大会女子48㎏級金メダルのシャハナ・ハジエワ(アゼルバイジャン)に敗れ、敗者復活戦でも黒星を喫した。制度変更に伴い、東京2020大会では5位だった52㎏級から階級変更を余儀なくされ、減量と軽量級ならではのスピード感に苦労しながらもここまで仕上げてきた。「新しい課題も生まれたけれど、来年また大会に派遣されれば挽回できるチャンスがある。パリを目指して頑張りたい」と、言葉に力を込めた。石井亜弧(三井住友海上あいおい生命保険)は1回戦の負傷の影響で、敗者復活戦を棄権した。

女子57㎏級(J2)で3位に入った工藤(右)と廣瀬(右から2番目)

女子57㎏級(J2)は、廣瀬順子(SMBC日興証券)と工藤博子(シミックウェル)がともに準決勝で敗れるも、それぞれ3位決定戦で勝利し、銅メダルを獲得した。廣瀬はパリパラ世界ランキング4位で現段階では出場圏内だが、「残りの3試合で負けるとすぐにランキングが入れ替わる。ポイントをしっかりと取っていきたい」と語り、工藤も「順子さんと争っているのでランキングを上げていきたい。パワー強化しているところなので自分の柔道を確立させたい」と話し、前を向いた。また、男子73㎏級(J1)の加藤裕司(伊藤忠丸紅鉄鋼)は、2回戦で敗れるも、その後の敗者復活戦を勝ち上がり、3位決定戦ではブラジル人選手に大内刈りと内股巻込の合わせ技で一本勝ちし、銅メダルを手にした。

日本人3選手がエントリーした男子60㎏級(J2)は、5月の全日本で視覚障害者柔道デビューを果たした櫻井徹也(牛窪道場)が準々決勝に進出。ジョージア人選手にゴールデンスコアで敗れ、敗者復活戦でも勝利はならなかったが、国際大会初出場ながら堂々とした試合運びを見せた。網膜色素変性症で視力は0.8ほどあるものの、視野の中心の周りがぼやけて見える。柔道は中学2年から大学1年まで続け、大学2年で始めたブラジリアン柔術はコロナ禍まで8年ほど取り組んだといい、得意の寝技を武器にこれからも経験を積んでいくつもりだ。廣瀬誠(愛知県立名古屋盲学校)、兼田友博(青森県立青森第一養護学校)は勝利はならなかった。

(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)