ウィルチェアーラグビー — 2017/5/27 土曜日 at 23:50:46

世界の3強が激突、新生ジャパンがめざすもの

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激しいプレッシャーでボールを奪いにいく日本=千葉ポートアリーナ(撮影/佐山篤)
激しいプレッシャーでボールを奪いにいく日本=千葉ポートアリーナ(撮影/佐山篤)

昨年のリオパラリンピックで日本代表が銅メダルを獲得し、人々に感動を与えたウィルチェアーラグビー。その日本代表が出場する「ジャパンパラ競技大会」が千葉ポートアリーナで行われている。リオの金メダルチームのオーストラリア、2位のアメリカが参戦する国際マッチ。25日から27日までの予選では、各国1日2試合ずつ計6試合を行った。その結果、最終日はまず3位決定戦の日本対オーストラリア戦が行われ、その勝者が予選1位のアメリカと決勝を戦う。

予選最終日の27日、第1試合でまず日本はオーストラリアと対戦。相手の得点源であるハイポインターに対して2枚、3枚とディフェンスをかけて追い詰める日本は、前半を30-23の7点差リードで折り返すことに成功。後半は相手の強いプレシャーを受けミスが出た場面もあったが、すぐにリカバリーするなどチームワークを発揮し、54-50で勝利した。

アメリカの攻守の要、チャック・アオキと競る池崎(右)
アメリカの攻守の要、チャック・アオキと競る池崎(右)

また第2試合はここまで2連敗を喫しているアメリカと対戦。序盤からアメリカの積極的なプレスに苦しめられ、点が伸びない日本。最終ピリオドに池崎大輔(3.0)や池透暢(3.0)の連続得点などで1点差に詰め寄るが逆転はならず、50-51で敗れた。

悔しさをにじませた日本チームだったが、悲壮感はない。日本は今大会、発展途上のライン(コート上でプレーする4選手の組み合わせ)を含む複数のラインをコートに送り込んで強化を図り、それぞれの課題を洗い出している最中だからだ。

たとえば、日本代表初の女子選手である倉橋香衣(0.5)が入るラインは新たな取り組みのひとつだ。コート上の4人の持ち点の合計は8点以内でなければならないが、女子選手がコートに入る場合はひとりにつき0.5点プラスされるというルールがある。そのため、ローポインターの倉橋が入ることで、あとの3人はこれまで実現しなかったハイポインターと持ち点が高いメンバーの組み合わせが可能になる。つまり、ライン編成の幅がぐっと広がるというわけだ。

ウィルチェアーラグビーは男女混合の競技。今大会唯一の女性プレーヤーである倉橋の成長と活躍に期待がかかる
ウィルチェアーラグビーは男女混合の競技。今大会唯一の女性プレーヤーである倉橋の成長と活躍に期待がかかる

今日のオーストラリア戦の第2ピリオドにおいては、この島川慎一(3.0)、池(3.0)、羽賀理之(2.0)、倉橋(0.5)のラインは強豪相手でもしっかりと機能し、リードを広げることに成功している。普段、BLITZというチームで倉橋の指導もしている島川は、「競技歴が浅い倉橋のこれからの成長が、日本チームの強みになっていくはず」と話し、期待を寄せる。

今年2月に就任したケビン・オアー日本代表ヘッドコーチは、ここまでの戦いについて、「とくに2番手以降のラインはまだ練習を重ねていかなければならないが、収穫が多い6試合だった」。また順位決定戦に向けては、「3位決定戦の相手オーストラリアより、私たちのほうが選手層の厚さ、ラインの深さは持っていると思う。いずれにせよハードなゲームになるだろうが、チーム全体で強い相手に対して戦っていく」と話した。

(取材・文/荒木美晴、撮影/佐山篤)