「2024ジャパンパラ水泳競技大会」が3日、横浜国際プールで開幕した。パリ2024パラリンピック日本代表に内定している選手もエントリー。女子50mバタフライ(S7)では、西田杏(シロ)が日本記録を更新する36秒62で泳ぎ、優勝した。
女子100m背泳ぎの予選では、視覚障害S11の石浦智美(伊藤忠丸紅鉄鋼)が日本記録を1秒以上縮める1分17秒56をマーク。また、S12の辻内彩野(三菱商事)は同種目の予選で出した日本新記録を決勝でさらに塗り替える泳ぎを見せ、存在感を示した。辻内は国際クラス分け受検の結果、S13からS12に変更となり、パリ大会でも新たなクラスでエントリーすることになる。より障害が重いクラスに認定されたことについて、「私生活では複雑な思いがあるけれど、競技では種目の選択肢が増えたと捉えている」と話し、前を向いていた。
男子100m背泳ぎ(S10)では、南井瑛翔(近畿大)が1分4秒76のアジア新記録で優勝した。苦手としている種目で好タイムをたたき出し、「パリでもメイン種目の200m個人メドレーの背泳ぎにつなげたい」と語った。
2025年11月15日~26日まで東京でデフリンピック開催
今大会は、多くの聴覚障害クラスの選手=デフスイマーも参加している。初日は男子200m自由形(S15)に茨隆太郎(SMBC日興証券)が、男子100m背泳ぎ(S15)に金持義和(mercari)がエントリーし、それぞれ決勝で予選を上回るタイムで泳ぎ切った。
2022年に開かれたデフリンピックブラジル大会で、得意の200m個人メドレーなど4種目で金メダルを獲得した茨は、ブラジル大会を最後に引退するつもりだったが、大会から4カ月後に2025年のデフリンピック開催地が東京に決まったことを受け、現役続行を決断。「日本で開催されるデフリンピックに参戦できるのは、選手として最大の喜び」だとして、東京大会での頂点を目指して練習を再開した。
この日の決勝は、パラリンピックメダリストの鈴木孝幸(GOLDWIN)の隣のレーンで泳いだ。クラスは異なるものの、鈴木を含めてパリ大会の内定選手がさらなる上を目指す姿に刺激を受けたといい、「日本選手団としてはパリパラの勢いを、デフリンピックにつなげたい。個人としても、来年は31歳になり、ベストな泳ぎができるチャンスだと思っているので、残り一年間、しっかりと練習したい」と言葉に力を込めた。
金持はブラジル大会のリレー2種目で銀メダルを獲得したものの、新型コロナウイルス感染拡大で日本選手団が途中帰国を余儀なくされたため、エントリーしながら泳ぐことができなかった50m背泳ぎなど、「やり残した種目がある」。その不完全燃焼の気持ちをエネルギーへと変え、強化に励んできた金持にとって、東京大会はリベンジの舞台でもある。金持は「100mと200mの背泳ぎ、できれば50mでも金メダルを狙いたい」と力強く語り、「日本でデフリンピックが開催されることで、聞こえない人たちの理解が少しでも進めば嬉しい」と結んだ。
(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)