車いすテニス — 2025/4/21 月曜日 at 9:48:37

【飯塚2025】小田が3連覇! 上地は準優勝

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強敵のデ ラ プエンテをフルセットで下し、大会3連覇を成し遂げた小田=いいづかスポーツ・リゾートテニスコート(撮影/植原義

「天皇杯・皇后杯 第41回飯塚国際車いすテニス大会(Japan Open 2025)」は20日、大会最終日を迎え、男女のシングルス決勝が行われた。

降り続く雨のため、センターコートから屋内コートに変更され行われたシングルス決勝。男子は世界ランキング2位で第1シードの小田凱人(東海理化)が同3位で第2シードのマーティン・デ ラ プエンテ(スペイン)と対戦。7-6(5)、2-6、7-5の接戦を制し、大会3連覇を果たした。

序盤は小田が精度の高いショットでポイントを重ね、5-1とリードする。だが、徐々に小田のボールに対応し始めたデ ラ プエンテが第7ゲームをブレークすると、強烈なサーブやコーナーを突く鋭いショットなどで一気に4ゲームを連取。互いにサービスゲームをキープし突入したタイブレークでは、小田が冷静に流れを作り、相手のミスを誘った。第2セットは豊富な運動量で小田のボールに食らいつくデ ラ プエンテがリターンエースでゲームを締めるなどして、このセットを奪った。

一進一退の攻防が続く第3セットの第9ゲーム、ポイントを取られても粘り強く追いかけるデ ラ プエンテが痛恨のダブルフォルトを犯して、小田からみてスコアは4-5に。このポイントを機に小田が一気にギアを上げ、逆転に成功。最後は4度目のチャンピオンシップポイントで相手のサービスリターンをバックハンドで沈め、死闘を制した。

オンコートインタビューで小田は、「まじで疲れました。天皇杯で勝ててすごくうれしい」とスピーチ。大会前に誕生日を迎えた母親に向けて「いつもは恥ずかしくて言えないけれど、いつも支えてくれて、美味しいご飯を作ってくれて。今回の賞金をすべてお母さんにプレゼントできたらなと思います」と続け、会場から大きな拍手が送られた。

今年は四大大会でまだ優勝していない全米オープンのタイトルを最年少で獲ることを目標に据える小田。「そのチャンスがある。ただ、ライバルたちのレベルがどんどん上がっているとすごく感じるし、すごく楽しみ。みんなで高め合っていきたい」と話す。

群雄割拠の男子はパリ2024大会を経て、一層競技レベルが向上している。それをけん引するひとりが小田であるが、「僕は先頭じゃなくて、常に中心、ど真ん中に居たい。その真ん中にいろんな選手が向かってくるというのが理想の形。テニスも“観たい”じゃなくて、“観ちゃう”試合をしたい。選手間においても、そういう選手でありたい」と語った。

今季もテニス車のセッティングを変えるなど自分のテニスを追及している上地。決勝では敗れたが、経験を糧に前に進んでいく

女子決勝は、第1シードの上地結衣(三井住友銀王)が第4シードの李暁輝(中国)に6-3、3-6、6-1のフルセットで敗れた。

ここまでの通算成績は上地の4勝1敗。今年は1月のメルボルンオープンで初めて李に敗れたが、直後の全豪オープンでリベンジしている。李は2021年の世界ランキングが150位だったのが、2023年には15位へとジャンプアップ。さらに昨年はパリ2024パラリンピックでは5位入賞を果たして13位、現在は5位まで上げている。右肩上がりの成長曲線を描く25歳とパリ2024大会金メダリストの頂上決戦に、大いに注目が集まった。

第1セットは李がサービスゲームをキープした後、互いにブレークする展開に。第5ゲームは李の強烈なサーブに対し、上地が抜群の反応を見せてリターンエースを繰り出し、5度のジュースに持ち込み、ブレークバックに成功した。上地はここから5ゲームを連取し、主導権を握った。しかし、第2セットに入ると李のパワーショットが炸裂。甘く入ったバウンド系のボールは上から叩かれ、4度のブレークを許した。ファイナイルセットも李がパワフルなショットで押し込み、上地につけ入る隙を与えなかった。

上地は試合後、「彼女のようなハードヒッターは今日のインドアの速いサーフェスでは有利になると思っていた。その中で対戦のイメージを描いてきたけれど、今日はその引き出しを出し切れなかった」と振り返った。続けて「ただ、手も足も出ないというわけではない。パリの決勝で自分が戦えた感覚が自分の糧になっている。ああいったプレーができるなら、また新しいショットが打てるのではないかと試行錯誤する1年にしようと考えている。結果も大事だが、試合の内容や自分自身の成長にも注目していきたい」と力強く語り、前を向いた。

(取材・文/荒木美晴、写真/植原義晴)